歯周病治療コラム

歯医者さんの半数は、患者ごとに使用材料や機器を滅菌していない?!

 歯医者さんに行って椅子に座って治療が始まるまでにいつも目に入って気になっていたものがあります。剣山のようにきれいに並べられた歯を削るドリルの先です。「これってきれいに並べられてるけど…1人ずつ交換されてるの?」と気になり、インターネットで検索してみると、怖い現実がありました。今回は、使用している材料や機器の滅菌についてお話していきたいと思います。

滅菌は、なぜ必要?

 B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、白血病の原因となるHTLV-1などの感染症は、血液などの人の体から分泌される体液を介して人に感染します。消毒(細菌を弱めること)や殺菌(特定の菌を殺すこと)では感染の危険性が残っています。感染予防には、機器などをしっかりと滅菌(すべての細菌を死滅させる)することが重要です。

歯医者さんでの感染予防対策の現状とは?

 数年前より、「使用したハンドピースは患者毎に交換し、オートクレーブ滅菌することがとよく勧められます」とされていました。しかし、2017年5月に公表された厚生労働省の調査によると、アンケートに回答した700施設のうち、ハンドピース(歯を削るドリルの持ち手部分)の交換・滅菌を患者ごとにきちんと行っている歯医者さんは、52%と半数しかありません。

  • 患者ごとに交換、滅菌 52%
  • 感染症患者と分かった場合に交換、滅菌 17%
  • 血液が付着した場合などに交換、滅菌 16%
  • 消毒薬で清拭(拭く) 13% 

歯医者さんで行っている感染予防対策

  • 1.使い捨ての手袋を使用し、患者さんごとに交換
  • 2.超音波洗浄器や医療用ミーレ(食洗機)で患者さんの口の中を触れた器具を洗浄
  •  医療用ミーレは、固まったタンパク質(血液・食べ物のかすなど)の除去率が高い
  • 3.洗浄した器具を滅菌パックにいれた後、滅菌装置で滅菌する
  • 4.滅菌処理できない器具・機器は、汚染しないように使い捨てのビニールカバーやラッピングなどをして汚染しないようにする

滅菌をきちんとしている歯医者さんを見分けるには?

 滅菌がきちんと行われている歯医者さんを見分けるには、インターネットとで確認するのもいいと思います。しかし、本当のことが書かれているとも限らないので注意が必要です。治療の時に、目の前で滅菌パックを開封してくれる歯医者さんは、安心だといえます。手袋の交換、スタッフの人がこまめに手洗いをしているかなども見ておくポイントです。

安心して治療を受けるなら

 感染症に感染していても、感染していることに気づいていない人も多く、HIV陽性の人は歯医者さんを受診する時に感染していることを隠しているということもあります。そのため、感染予防対策はとても重要ですが、滅菌装置が高額だったり、滅菌パックをするとコストがかかったりと歯医者さんにとっては金額的負担があります。そんな中でも患者さんの安全を考え、しっかりと感染対策をしてくれている歯医者さんは信頼できると思うので、ぜひ歯医者さんを選ぶポイントの1つにしてみてください。